ひろいものの話
むかし、むかし、ひとつお寺があって和尚さんと小僧さんが住んでいました。
ある日のこと。
和尚さんは馬にのって、すこしとおくの家へ、お経をよみにでかけました。
そのとき小僧さんは、あるいてついていきました。すると、道のうえに、さいふがおちていました。ずいぶんおかねのはいっていそうなさいふです。
「あ、いいもの、みつけた。」
小僧さんは、よろこんで、ひろいかけました。
それをみて、馬のうえから、和尚さんがしかりました。
「小僧、小僧、ひろっちゃいかん。ほとけさまにつかえる人間は、そういう物をみても、みないふりをしていなければいけない。道におちてるさいふをひろうなんて、いちばんわるいことだぞ。」
小僧さんは、すなおに、
「は——い。」とこたえましたが、惜しくてたまらないので、うしろをみいみい、あるいていきました。
そのうちに、つよい風がふいてきました。
和尚さんのずきん(头巾)が、フワーッととんで、道のうえにおちました。
でも、小僧さんは、物をみてもみないふりをしろといわれたものですから、知らん顔をしておりました。
やがて、お経をよむ家につきました。
和尚さんは、やっと、ずきんがなくなったのに気がついて。
「小僧、小僧。わしのずきんを知らないか。」とききました。
「はい、知っていますよ。風にふきとばされて、道におっこちたんです。だけど、和尚さんが、物をみてもみないふりをしろとおっしゃったので、わざとだまっていました。」
和尚さんは、たいへんおこって、また、しかりつけました。
「ばかっ、みてもみないふりをしろといったのは、はじめから道におちている物のことだ。わしが馬にのってるとき馬からおちるものは、みんなわしのものだ。それは、なんでも、ひろわなくちゃいけない。」小僧さんは、また、すなおに、「よくわかりました。こんどっから、きをつけます。」
といったので、和尚さんも、きげんをなおしました。
お経がすむと、おみやげなどをもらって、かえりみち(归途)につきました。
和尚さんは、やっぱり、パカパカと馬にのっていきます。小僧さんは、やっぱり、テクテクとあるいていきます。
でも、こんどは、小僧さん、気が気ではありません。おみやげがおっこちないか、和尚さんのぞうり(草鞋,草履)がおっこちないかと、しんぱいしいしい、あるいていきました。そいしたら、馬が、フン(粪,尿)をひりだしました。
「あれ、あれ、たいへん。馬から、物がおっこちる。」
小僧さんは、あわてて、あたまにかむっていたすげがさをとると、そのなかに、馬のフンを、すっかりうけました。
そして、両手で、たかくさしあげて、
「和尚さま、和尚さま。いま、こんなにたくさん馬からおちてきました。これも、みんな、和尚さまのものでございます。」と大きな声でいいました。
注釈1、ひろっちゃいかん=ひろってはいけない。意思是“不能拣”
责任编辑:虫虫